論説委員会新設にあたり
今年8月で人民新聞は創刊50年になる。創刊時には社説が毎号掲載されていた。社説のテーマや内容については、渡辺雄三初代編集長を中心に編集委員が集まり喧々諤々の議論をした後、担当者が四苦八苦して書いていたものだ。いつしかその社説欄が消えて久しくなる。
「人民新聞を再建する会」の議論のなかで主張、論説も必要ではないかとの指摘があり、今回「論説委員会」を設けることになった。月に1回論説委員会を開き、その時々の情勢や政治課題をテーマに議論し、委員の一人が論説記事を書くことになった。論説はその議論のまとめのようなものではなく、主張、文責はあくまでその論説を書いた委員に帰属することにする。 人民新聞論説委員会
論説委員会の第1回は「自民党改憲案」をめぐる議論となった
安倍は3月25日の自民党大会で「自民党改憲案」を提示し、秋の通常国会で憲法発議に持ち込めたらと計画していた。しかし「森友文書改ざん問題」の急展開でそれどころではなくなり、今年9月の総裁選挙で盤石といわれていた安倍首相3選も怪しくなってきた。
議論では「2012年の改憲草案から6年間の自民党改憲派の変節」「米国の関与」「9条2項を残し自衛隊を明記することの意味」「自衛隊を違憲とした場合の日本の安全保障の在り方」などが議論となった。
自民党の改憲推進本部がまとめた4項目のうち、「教育無償化」や自民党の手前味噌改憲である「参院選の県単位で最低1人を選出する合区の解消」などは、改憲案に盛り込まなくても教基法や選挙制度の改正で可能な、政策問題範疇だ。安倍の主眼は、自衛隊明記と緊急事態条項新設にある。
米国は海外派兵できれば目的達成「自衛隊を憲法に明記」の落とし穴
12年の改憲草案に改めて目を通し驚くのは、戦前の大日本帝国憲法を彷彿とさせる復古調だ。当時の改憲推進本部長は保利耕輔、最高顧問に麻生、安倍などが名を連ね、起草委員会の委員長には中谷元、メンバーは日本会議議員連盟のそうそうたる面々。そして、実際には安倍が側近を通じて原案を作成させたといわれている。その下敷きは、明治22年に公布された大日本帝国憲法である。
草案は前文「日本国は…国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって…統治される」「国と郷土を誇り…助けあって国家を形成する」と続き、第一章では改めて天皇を国の元首と定め、国防軍の保持と武力行使を認める、となる。
そして第二章では、冒頭の「戦争の放棄」が削除され「安全保障」に改められ、第9条2項で内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍の保持と国際社会での役割や機密保持、独自の審判所を設けることなど、国防軍の位置付けと具体的任務が定められている。第2次世界大戦において日本に侵略され、多くの人々を殺された中国や朝鮮半島、アジア周辺国が、この改憲草案を目にして危機感を高めたのは当然だ。そして、恐らくは米国防当局も日本に強い警告を発したであろう。
この改憲草案は6年を経て消え去り、結果として、今回の「9条2項戦力の不保持、交戦権の放棄を維持したまま自衛隊の存在だけを明記する」という安倍改憲案に後退した。
3月25日の自民党大会で「改憲」のアドバルーンを上げる計画であった安倍に対する米国の嫌悪感は、想像できる。米国は、忠実なポチに主体的な武装や自律的な交戦権を持つことを望んではいない。米国にとって、日本はあくまで対米従属の存在でなくてはならない。「集団的自衛権容認」と「自衛隊容認」さえあれば、米国の軍事目的である自衛隊の米軍への帰属と海外での戦闘参加は達成される。それが「自衛隊を憲法に明記すること」の落とし穴だ。
旧憲法改憲草案にこだわる自民党右派勢力を牽制するために、「森友文書改ざん」が米国諜報機関の工作でリークされたとしてもおかしくない。
改憲反対運動は森友問題に連動し安倍内閣打倒へと向かっている
改憲反対運動は「森友文書改ざん問題」で一気に火が広がり、自民党は党大会に向けての改憲草案作りどころではなくなった。日に日に盛り上がる安倍内閣打倒の全国的な運動の盛り上がりに今、改憲勢力はたじろいでいる。
学会の顔色をうかがう与党公明党は改憲騒動に巻き込まれずにホッとしており、森友・籠池問題で爆弾を抱える維新と松井は今や改憲どころではない。安倍は総裁3選どころか、9月までの任期続投も危うくなってきた。
27日行われた佐川前国税庁長官の証人喚問では、焦点となる質問には「捜査対象」を理由に証言拒否し、安倍内閣は幕引きを図るつもりだ。しかし、安倍昭恵をはじめ関係者の喚問を求める声は国会内外で拡大している。今こそ国会前で、全国で改憲反対、安倍政権打倒の声を挙げよう。